大判例

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大阪高等裁判所 昭和62年(う)1322号 判決

大阪税関支署及び出張所事務分掌規則によれば,空港支署の関税広報官(以下,「関税広報官」という。)は,「空港における税関行政についての広報に関する事務」を担当するものとされており,関係証拠によれば,その職務内容は,報道関係としては,貿易統計の発表,社会悪物品や珍品の輸出入貨物の紹介,取材等の窓口としての報道関係者との応待,また,税関の広報活動として,広報紙の原稿作成,社員研修,視察等に際しての旅具検査場等の見学案内等であって,右のような職務の性質上,常に税関と報道関係者との円滑な関係を保つ職責も担っていたところ,報道関係者が取材目的で検査場に立ち入る場合には,空港支署伺決第97号「国賓等に対する伊丹空港における通関手続の取扱い」1(3)により検査場立入り申請書を総務課に提出して総務課長の許可を受けることとされており,関税広報官がその窓口となることとなっていたが,取材が緊急性を要することが多いところから,空港税関支署長と空港の記者クラブである「おおとり記者クラブ」との文書による取決めにより,事実上,所定の文書による申請や総務課長の決裁を経ることなく,窓口となっている関税広報官に申し出ることによって,同クラブ所属の記者に対しては入場と記した腕章をさせて取材のための旅具検査場への立入りが許されており,腕章のない記者クラブ所属の報道関係者や,記者クラブに所属していない報道関係者に対しては,関税広報官の裁量によりその専用保管の2個のバッジの中から貸与し,申出の報道関係者が多数の場合には,関税広報官が監視事務室(43個保管)又は総務課(5個保管)に連絡し,それぞれ保管のバッジを当該申出人に交付して,バッジをつけた報道関係者の旅具検査場への立入りが許され,取材のための報道関係者が多数の場合には,関税広報官がこれらの報道関係者を旅具検査場等に案内し逸脱行為のないようにその取材に同行するなど,報道関係者の取材目的での旅具検査場への立入りについては,関税広報官が事実上その管理に当たっていたこと,また,前記伺決第97号1の(1)及び(2)によれば,内外要人やこれに準ずる空港税関支署長が特に指定した者を送迎するために検査場へ立ち入ることについては,検査場入場申請書を総務課に提出して空港税関支署長の許可を受けることとされているが,海外から帰国する報道関係者の上役や知人が右にいう空港税関支署長の特に指定した者に当たらない場合においても,報道関係者がこれらの者を出迎え目的で旅具検査場内へ立ち入るについては,前記税関と報道関係者との円滑な関係維持という関税広報官の職責上,従前から,関税広報官が事実上その窓口となり,出迎えを申し出た報道関係者が2名までの場合には前記のように自ら保管するバッジをその者に貸与し,2名を超える場合には事前に正規の手続に従って総務課に申し出て許可を得,同課で保管しているバッジを借り出してこれをその者に貸与し,バッジを胸につけさせた上,その者らと同行して旅具検査場に立ち入り,その者らとともに帰国する人を出迎えていたところ,このように報道関係者から帰国する人を出迎えたい旨申出があった場合には,関税広報官が必ず,あらかじめあるいは旅具検査場に入場している間に,旅具検査の責任者である統括監視官らに対し,その旨を告げ,この告知があると,右帰国者の旅具検査に際しては,旅具検査官の簡単な質問などによる検査にとどめ,開披検査を省略するという便宜供与の取扱いがなされてきており,以上のとおり報道関係者の出迎え目的での旅具検査場への立ち入りについても,関税広報官が事実上その管理に当たるなどしていたこと,収賄者とされる小谷も関税広報官として,報道関係者の取材目的あるいは送迎目的で旅具検査場への立ち入り,旅具検査について,事実上,以上のような管理ないし取扱いをしてきたこと,以上の事実が認められる。

ところで,刑法197条にいう「公務員の職務に関し」というのは,公務員が法令上掌握するその職務のみならず,その職務に密接な関係を有する慣行上又は事実上所管する職務行為に関する場合も含むものと解するのを相当とすることについては,判例上確定した見解であるというべきところ,以上認定の事実関係に基づきこれをみるに,なるほど,関税広報官が報道関係者の取材目的あるいは送迎目的での旅具検査場への立ち入りを管理することや,旅具検査に関与することを所管する旨の規定は前記事務分掌規則,伺決などの法令に存在しないことは所論のとおりであって,したがって,関税広報官が報道関係者の取材目的あるいは送迎目的での旅具検査場への立入りを管理することや,統括監視官らに対し旅具検査に際して便宜供与すべき報道関係者の帰国がある旨告げることは,関税広報官の管掌する「空港における税関行政についての広報に関する事務」という職務行為そのものではないが,その固有の職務に由来し税関と報道関係者との円滑な関係維持の職責上,右職務と密接な関係を有する慣行上又は事実上所管する職務行為と認めるのが相当であり,このような小谷の職務行為に関して,同人に対し,その対価として金員を供与する等すれば,贈賄罪が成立するものといわなければならない。

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